なぜ学校で理科を学ぶのか?
小中学生からよく「こんなこと勉強して、何の役に立つの?」と聞かれることがあります。学校や塾の先生なら、一度は耳にしたことがある質問でしょう。そして、その答えは先生によって十人十色です。今回は「理科」に絞って、私なりの答えをお伝えします。
小学校や中学校で学ぶ理科は、義務教育で必ず学ぶ科目です。もともと身近な生活に関係する内容が多く取り上げられ、そこには基本的な科学的な考え方を身につけ、自分の身を守り、似非科学に惑わされない人になってほしいという国としての思いが込められていると感じます。
例えば、中学理科でよく出題される問題に「寒冷前線付近に生じ、強い雨を降らせる雲は何か?」というものがあります。答えは「積乱雲」です。定期テストの定番問題で、他の雲は知らなくても「積乱雲」だけは覚えている、という人も多いのではないでしょうか。
これは出題者が積乱雲マニアだからではありません。積乱雲は身の危険に直結する雲だからです。今年4月には奈良市の中学校で、部活動中のサッカー部員が落雷に遭い、中学3年生が意識不明の重傷を負う事故がありました。また、8月には石川県と富山県で線状降水帯が発生し、土砂崩れや河川の氾濫、住宅の浸水など多くの被害をもたらしました。いずれも積乱雲が関係する現象です。だからこそ、こうした知識は繰り返し出題されるのです。
近年はインターネットやAIの発達により、「調べればすぐ分かるのだから、用語を暗記する意味はない」という声も聞かれます。しかし、用語を覚えていなければ、その事象をそもそも認識できません。積乱雲という言葉を知らなければ、空の雲を見ても危険を察知できないのです。学校の勉強は、定期テストの点を取るためだけのものではありません。
理科は、小学校で4年間、中学校で3年間、計7年間学びます。内容は専門的すぎず、日常生活に必要不可欠な知識ばかりです。人類が数百年かけて築き上げた知識を、わずか7年間で習得できると考えれば、これほどコストパフォーマンスの高い学びはありません。ぜひ前向きに取り組んでほしいと思います。